恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

「ごめんなさい……そういう気分じゃ……」


膝を抱き締めて断るあたしに、ふたりは「見て」としつこい。


「……もう……何なの」


のそのそと体の向きを変え、テーブルの上に広げられた雑誌を覗き込む。


覗き込んで、あたしは言葉を失った。


「まったく。最後まで困った人だったな。突然ふらーっとどっか行っちゃうし。それで忘れた頃にひょっこり帰って来るし」


な、須藤、と堀北さんがあたしの背中を叩いた。


ぽん、と叩かれて、やっと涙がこぼれた。


その写真の上にぽと……とひと粒の涙が落ちる。


透明なひと滴は、写真の青色と溶け合ってクリアブルー色の、おそらく世界でいちばん小さな水たまりになった。


「潤一は……」


うらやましいくらい自由で、どうしようもない人だった。


「でもあたしっ」


その写真は間違いなく潤一が撮ったものだった。


――フォトコンテスト? 写真、応募したの?


――まあね。グランプリは取れなくても、せめて入賞くらいはしてて欲しいんだけどなあ


――いつの間に?


――さあ。いつの間にか


――もう。テキトーなんだから


出逢った瞬間から飄々としていて。


いつも冗談めかした口調で。


――結婚しよう


大事なこともさらっと言ってのけるような人で。


どれが真剣でどれが冗談なのか、よく分からなくて。