『8月20日、日本時間の午前5時頃、カンボジア北西部シエムリアップ中心部で、日本人男性がふたり組の男に足や腹部数ヶ所を撃たれ』
あたしはテレビ横の引き出しにしまっていた茶封筒を取り出し、ボールペンを握った。
サインしなきゃ。
あ、印鑑も。
『搬送先の病院で』
「あっ」
手が震えてボールペンを床に落としてしまった。
『息を引き取りました』
床の上をコロコロ転がって止まるボールペン。
『亡くなったのは東京都在住のフリーフォトグラファー、榎本潤一さん33歳男性で』
テレビ画面を見て、足がすくんだ。
『榎本さんは、アンコールワット遺跡群を撮影しに向かう途中に襲われたとみられ』
頭の中がすっぽり抜け落ちたように空白になる。
『現場には榎本さんのものとみられるカメラが残されており』
淡々と告げるキャスターの背後には、いつも飄々とした笑顔とは正反対の固い表情の潤一の顔が映っていた。
『犯人は現在も逃走中で、地元警察は強盗殺人事件として行方を追っています』
これは夢だ。
きっと、夢だから。
物凄く悪い夢を、あたしは見ているだけだから。
その場にへたり込み、そう自分に言い聞かせた。
夢だから。
あたしはテレビ横の引き出しにしまっていた茶封筒を取り出し、ボールペンを握った。
サインしなきゃ。
あ、印鑑も。
『搬送先の病院で』
「あっ」
手が震えてボールペンを床に落としてしまった。
『息を引き取りました』
床の上をコロコロ転がって止まるボールペン。
『亡くなったのは東京都在住のフリーフォトグラファー、榎本潤一さん33歳男性で』
テレビ画面を見て、足がすくんだ。
『榎本さんは、アンコールワット遺跡群を撮影しに向かう途中に襲われたとみられ』
頭の中がすっぽり抜け落ちたように空白になる。
『現場には榎本さんのものとみられるカメラが残されており』
淡々と告げるキャスターの背後には、いつも飄々とした笑顔とは正反対の固い表情の潤一の顔が映っていた。
『犯人は現在も逃走中で、地元警察は強盗殺人事件として行方を追っています』
これは夢だ。
きっと、夢だから。
物凄く悪い夢を、あたしは見ているだけだから。
その場にへたり込み、そう自分に言い聞かせた。
夢だから。



