恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

「須藤」


堀北さんはあたしの肩を叩き、携帯を差し出してきた。


「先輩の家族、明日にでもカンボジアに向かうそうだよ」


「どうしてですか」


「……遺体の確――」


「嘘です」


あたしは堀北さんからむしるように携帯を奪い取り、笑った。


「遺体って何ですか? 帰って来るんですよ、潤一。今朝、電話があって帰国するって」


「須藤」


堀北さんは笑い返してはくれなかった。


真っ直ぐな瞳で、あたしを憐れむように見つめてくる。


「あのな、須藤……先輩は」


「だって! 肉じゃが作ってって言ってたし!」


「須藤!」


まるで叱るような口振りで、堀北さんはあたしの肩をつかみ前後に揺する。


「もうっ! いい加減にしてくださいっ!」


あたしはその両手を乱暴に振り払い、テーブルの上にあったリモコンでテレビをつけた。


みんな、頭がおかしくなっちゃったんじゃないか。


みんな、頭が狂ってしまったんじゃないか。


「何なの!」


みんな、どうかしてる。


そう思ったけど、どうかしてるのは、あたしだった。


ニュースキャスターがテキパキとした口調で原稿を読み上げる。