恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

あっ。


そうだ。


帰って婚姻届にサインしなきゃ。











「あっ! 陽妃さん」


帰るとマンションの前に小春と堀北さんがいて、あたしを待っていた。


「須藤……どこ行ってたんだよ」


「どうしたの、ふたりそろって」


「どうしたって……お前、こんな時に」


「こんな時って?」


あたしは額に滲んだ汗を手で拭いながら、堀北さんに微笑んだ。


「潤一のアトリエです。掃除をしに」


「掃除?」


何かを言いたそうに堀北さんが眉頭を寄せる。


その隣で小春がうつむいた。


「だってほら、明後日帰って来るから。潤一。今朝ね突然電話が掛かってきたんです」


「須藤……さっきテレ――」


「あっ、ふたりとも上がる?」


あたしは反射的に堀北さんの声を遮った。


「狭いし、アイスコーヒーくらいしか出せないけど」











部屋に上がってもらったふたりに、グラスにたっぷりの氷を入れてアイスコーヒーを出した。


「あのさ、須藤」


と堀北さんが切り出そうとした時、あたしの携帯が鳴った。


確認したあたしは思わず大きな声を出した。


「潤一! だってこの番号、国際電話!」


ほら! 、とディスプレイを見せると、ふたりは「え」と声を重ねて難しい表情で見つめ合った。