恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

小春からの着信だったけど、出ずに部屋を出た。


ふつりと着信音が途絶え、入れ違いに今度は堀北さんからの着信。


もう。


これからアトリエに行って掃除しなきゃいけないのに。


掃除が済んだら、婚姻届にサインをしなきゃいけないし。


忙しいのに。


結局、アトリエに到着するまで小春からは10件、堀北さんからは20件もの着信があったと思う。


でも、出なかった。


忙しくてそれどころじゃなかったし。


暢気におしゃべりしてる場合じゃなかったし。


アトリエに到着するや否や、あたしは何かに取り憑かれたように片っ端から掃除を始めた。


寝室もバスルームもトイレもキッチンも。


リビングも、全部。


普段から小綺麗にしているものだからゴミは出てこないし、埃だってほとんど出ないのに、汗だくになって必死に掃除をした。


終わったのは21時近くで、結局2時間近く掃除をしていたからヘトヘトだった。


でも明後日、潤一が帰って来ることを想像すると苦でも何でもなかった。


アトリエのドアを閉めて施錠をした時、ポケットの中で携帯が鳴った。