よいしょよいしょ

着いた〜

「遅くなってすいません
すぐやっちゃいますね」

俺は鹿島先輩が座っているのとは別の机に道具を置くと、急いでお茶をいれ始めた。

茶碗をあっためて……

お湯を沸かして

えっと確か97度くらいがいいんだよな……

つっても今は温度計持ってないし

温度計常備してる高校生とかいないよ

ということで沸騰したらでいっか

あとは注いで……できた!

「鹿島先輩、できたんで持ってきますね」

「ああ」

なみなみとお茶が入った茶碗を持つ。

こぼれそう

気をつけて気をつけて

……不可抗力だったのだと思う。

俺は気をつけてたんだもんね。

目の前を虫が横切り、俺はバランスを崩した。

熱いお茶が自分にかかりそうになり、俺は目をつぶる。

「危ね(あっね)」

その時

グインと腕が引っ張られた。

え?

鹿島先輩!?

助けてくれたのかな……?

「ありがとうございます」

「あ……いや
大丈夫か(だいじょっか)?」

ふぇ?

い、今の……

「鹿島先輩……今のは……」

「……」

標準語じゃないよね。

俺これでも方便とかよく知ってるんだけど、これ

鹿児島弁……だね。

「鹿島先輩、鹿児島の人だったんですか?」

「……」

「鹿島先輩?」

「……そうだ」

へぇー

「意外です」

「誰にも言うな」

「何でですか?」

「教えなければならないか?」

「いえ、そんなことは……」

「ならば教える必要もない」

「……鹿島先輩、標準語ペラペラですね」

「それで?」

「あ、いえそれだけです……」

鹿島先輩はしばらく黙った後、おもむろに口を開いた。

「なるべく、話さないようにしていたんだ。どこで失敗するか分からないから……
そのせいで、勘違いさせてしまったようだ。すまない」

勘違い?

あ!

「ただ、手伝うのは大変だろうと思っただけだったんだが……」

鹿島先輩……いい人!

「じゃあ、部屋に帰ってもいいっていうのは……」

「何もしていないのにいつまでもいさせては、君の時間がもったいないと……
本当にすまない」

鹿島先輩めっちゃいい人!

「鹿島先輩が謝ることじゃないです!
俺が勝手に勘違いしただけなんで!
というかむしろ鹿島先輩は優しくていい人ですよ! 尊敬します!」

「あ、ああ……」

「あと俺、鹿島先輩の手伝いしたいです! 明日からはやらせてもらえませんか?」

「それは助かるが……」

「やったぁ!
じゃあ明日からはバリバリ働いちゃいますね!」

いや〜

明日が楽しみ