「……だけどさ
なにが起こったのか、そしてこれからどうなるのか
それは、教えてほしい」

俺はなにも知らないから

「……わかった」

一瞬の隙

しかしその後心は了承をした

「たぶんこの後、母さんはあの紙を世間に公開する」

「あの紙って、俺が持ってきた?」

そうだよ、と頷く

「あの紙ってなんなの?」

「……DNA鑑定書」

でぃーえぬえーかんていしょ?

少し考え、それがDNA鑑定書だと気づく

「うん……
普通はその鑑定する本人がいなければならないんだけど
今回は母さんがいわゆる"そういう"ルートで依頼したんだ」

"そういう"ルートがどういうルートなのかはあえてきかない

でも

「なんでその紙があの屋敷にあったの?」

あの俺が勝手に入っちゃったあの屋敷に

侵入って言い方はしない

あくまで入っちゃった

入れちゃった

「あの人に奪われたんだよ
本妻の……」

ああ、あの和風美人さんにか

「じゃあさ、捨てずにとっておいたのはなんでなんだろ?」

捨てちゃえば誰かに持ってかれるなんてことあり得ないのに

「捨てる方が危ないと思ったんじゃないかな、
自分で持っている方がまだ安全だって」

そういうもんなのか

「……そういや、この話教えてもよかったの?」

俺のこと眠らせたのに

「僕が話せるのは、自分が知ってることだけだから」

「それはつまり……?」

「僕も全部知ってるわけじゃないんだ」

自分がことの根本にいるのに自分がなにが起こっているかわからないなんて、馬鹿らしい話だけど

と皮肉っぽく笑う心

それが嫌で、なるべく自然に話をそらす

「だからって俺、心がダメだって言ったら秘密にするよ」

わざとすねたように言った

「みっちゃん、それは"今"の話でしょ?
それにもしも将来、みっちゃんが…その……」

急にしどろもどろになる

「その……御子柴家のライバル会社とか……そういうとこに……あの……」

あの…その……、と言いにくそうにしていたが

軽く深呼吸をして俺を見据える

「……嫁ぐことになったら
弱点になるかもしれないから……」

「……は?」