青と口笛に寄せられて



えぇ、えぇ。
分かってますとも。
啓さんには麗奈さんっていう恋人がいるじゃないの。
新参者かつ恋愛自粛中の私なんて、どうしたって入っていけるようなものでもないんだ。


そうそう、気になる程度なら引き返せばいい。
好きになる前に引き返しましょう。
そうすれば傷にならなくて済むしね。


「深雪ちゃんってさ」


耳元に政さんの声がして、ついでに吐息もかかってきて、弾かれるように反対側に体を倒した。
新庄さんの肩にぶつかり、「すみませんっ」と謝る。
私の過剰な反応が楽しかったらしく、政さんはフフフと笑っていた。


「麗奈のことずっと見つめてるよね!好きなの?」

「はっ!?」


全員の視線が私に集まる。


「ちょっとちょっとちょっと!やめてくださいよ!変な疑いかけないでくださいよ!!」


急いで否定に否定を重ねていると、麗奈さんも加勢する。
呆れたように腰に手を当てて。


「ほんとだわ。やめなさい、政ったら」

「だってずーっと見てるしょ」


おっとっと。危ない危ない。
啓さんのことを見てるって思われなくて良かったー。


チラリと啓さんを見ると、手で口元を隠して笑いをこらえていた。
夕方、元彼の浮気がどうとかそういう話をしたばっかりだったから、思い出し笑いでもしてるんだろう。


「政くん、あなた誤解を招くような発言は慎みなさい」


裕美さんにビシッと注意され、「はーい」と舌を出す政さん。
本当にやめてほしい。
あらぬ疑いをかけるのは。
私はノーマルです。