青と口笛に寄せられて



ガーーーーーン。
笑われた。大爆笑された。
というか、啓さんってここまで笑うんだ。


「ちょ、ちょっとちょっと!そこまで笑うことないじゃないですか!」

「ごめ……ちょっと待って……」


ひーひーお腹を抱えて笑って、息も絶え絶えになった啓さんがしばらくしてからようやく体を起こした。
4頭の犬たちもキョトンとして私たちのやり取りを見ている。


「いやー笑った。あ、笑ってごめん」

「謝っても遅い!」

「仕方ないべさ。内容が内容なだけに」


彼はネックゲイターを顎の下まで下ろして深呼吸をしたあと、面白そうに私の顔を眺めてきた。


「うん、それで?彼氏は浮気したってワケだ、その可愛くて巨乳の後輩の子と。で、深雪はいたたまれなくなって仕事を辞めた、と」

「その通りです……。むしろ浮気現場を目撃して……、私のアパートで」

「マジか。凄すぎる」

「そして私は、傷心旅行で北海道に来たってわけなんです」

「それでか。その思い切りの良さは」

「え?」


はて、と私が首をかしげると、彼は青い瞳を夕日にキラッと輝かせながらニヤッと笑みを浮かべた。


「なんでもある便利な東京から、コンビニも近くにないこんな土地で働きたいなんて、思い切りが良すぎるしょ。何かあったんだろうな〜くらいには思ってたけど話したがらないし。でもそこまで凄まじい話だとは思ってなかったわ」


彼が本当に「凄まじい」と思っているかどうかは微妙だ。ちょっとバカにしたように笑ってるから。
アホな女だな、とか思われてたりしたら立ち直れない。