青と口笛に寄せられて



不思議な輝きを放つアッシュグレーの髪の毛と青い瞳は、どこから見ても目立つ。
「おぉ〜!」と女の子たちは目を丸くして啓さんを見つめていた。


「カラコンでも外人でもありませんよ!曾祖父さんがカナダ人なんですよ〜。顔は日本人ですけどね!」


政さんがニッコリ笑顔で解説してくれたもんだから、彼女たちはゴキゲン。
その代わり啓さんはフキゲンになった。


「……えーと。はい。そういうことです。というわけで話を戻します。いいでしょうか」

「お兄さん怒んないで〜。イケメンが台無し〜」


あはは、と笑い声を上げる女の子たちに微妙な笑みを返した啓さんが、そのあと政さんを鬼の形相で睨みつけたのは言うまでもない。


啓さんの不機嫌オーラはその後も続いたものの、お客様には優しく、政さんには厳しく、私にも厳しく(これはいつものこと)。
ギスギスした空気をゴーグル越しに醸し出しながら仕事に励む啓さんに、これといった言葉をかけることも出来ずに終わってしまったのだった。






私は彼らのやり取りを見てケンカに発展するんじゃないかと密かにヒヤヒヤしていたんだけど、夕方のブレイクタイムでコーヒーを飲んでいる時に麗奈さんに午前中のことを話したら、この心配をあっさりと否定された。


「ケンカなんてしないよ。政のイタズラには啓も慣れてるからね」

「で、でも。啓さんめちゃくちゃ怒ってましたよ?」

「怒ってても言い返したりしなかったしょ?」


確かに、麗奈さんの言う通り啓さんは特に反抗や抵抗はしていなかったような。
お客様がいるから我慢してたのかと思ってたけど。


「あれはね、言い返すと政がさらに喜んじゃうからやらないんだわ。もう長年一緒にいるから、政にケンカを吹っかける気にもならないのね」

「小学生みたいな人なんですね、政さんは」


何気なく漏らした感想を、とっても嬉しそうに麗奈さんが拾い上げてうなずいた。


「そうそう!それよ!ピッタリだわ、その言葉。政は小学生なのよ。思ったこともすぐ言っちゃうし、行動しちゃうの。そんな素直なのがあの人のいい所でもあるけどね」