青と口笛に寄せられて



ソリの準備を終えて、倉庫を出る前に啓さんはブルーのダウンのポケットから腕章タイプの名札を取り出す。
それを私に渡してきた。


「つけて」

「え……、でも麗奈さんの役目なんじゃ……」

「決まってない」


そうですか、と返しつつ名札を彼の左腕に通して名前がしっかり見えるように位置を調整しながらつける。
名札はいつも、啓さんが自分でつけることがほとんど。
それを麗奈さんが見つけて、「曲がってるべ」と直すのが決まっているパターンだった。


なんで急に?
疑問に感じていたら、啓さんの右手が私の前に出された。


「深雪の名札。つけっから」

「ありがとうございます」


私もオレンジのジャケットから自分の名札を取り出して彼に渡した。
同じように左腕につけてもらう。
そばに感じる彼の温もりとか、ちょっと左を向いたら上には彼の顔があるのかと思うと、やけにドキドキしたりして。


まいったなぁ、と自分で嫌になる。
ちょっと人と違う見た目で青い綺麗な瞳をしているのとかもあるけど、犬に優しく笑いかけてるのとか、マッシャーになってる時は生き生きしてるのとか、何気なくサポートしてくれるのとか。
最近かなりの頻度で「いいなぁ」と思うようになってきた自分自身に腹が立つ。
ちゃっかり欠かさず身につけてるこのネックゲイターだって、彼からもらった物だしね。


会社で言う先輩後輩の立場だし、もう恋愛はたくさんだし、彼には麗奈さんがいるし。
不毛な恋はもういい。


空っぽになりたくない。


ということで、この気持ちは封印!!
フタをしめて、鍵をかけるのだ!!