青と口笛に寄せられて



3月1日。
話には聞いていた通りに、江田さんが「また冬に来ます〜」なんて言いながら去り、代わりに1人の男性がやって来た。


明るい茶髪にピアスホールの空いた耳。
恐ろしくスタイリッシュな上下の防寒着に、少しタレ目の甘い顔立ち。
正真正銘のイケてるメンズ。要するにイケメン。


「ひっさしぶり〜!」


元気印と言った感じで、1人でテンションMAXの状態で雪道を走ってきたのだ。


家の中から泰助さんと裕美さんが出てきて、フフフと嬉しそうに笑顔を見せる。
私の隣に立っていた麗奈さんが「政!」と一目散に彼の元へ駆け寄った。
ガバッと両手で麗奈さんの体を抱きしめる彼。


ギョッとして慌てふためく私を横目に、啓さんが呆れたようにため息をついているのが見えた。


「元気そうだな、政」

「おー、啓!お前も相変わらずだな」


普通に言葉を交わし合ってるけど、私の方は気が気じゃない。
あなたの彼女、彼に抱きしめられちゃってるけどいいんですか?と問いただしたい。
啓さんは少しも気にする素振りを見せない。


「麗奈、ちょっと太ったしょ?ケツとか感触違う気がする!」

「どこ触ってんのよ!」


さりげなく麗奈さんのお尻を触ったらしい彼は、彼女に軽くビンタされている。
それでも2人とも笑ってるんだからお互い冗談のようだ。
あははおほほと楽しげな空気に、1ミリもついていけない。


「あ、深雪ちゃんに紹介するわ」


オドオドしている私に気づいて、裕美さんが茶髪の彼を手招きする。
彼は「お!」と目を丸くして私に近づいてきた。