スポーツ用品店に連れてきてもらった私は、ローカル感漂う店内を目的もなくうろうろ歩き回った。
想像していたよりは大きいお店で、品揃えは充実とは言えないまでも「どれにしようかな」って少し迷うことが出来るくらいの商品が並んでいる。


「まずはジャケットでも決めっか」


私に任せていたら閉店になるとでも思ったのか、啓さんが案内するように店内をスタスタ歩くのでついていく。
彼にペラいと言われた白のダウンコートを思い出して、白っぽいジャケットを選び取って体にあてていると。何か不満があるらしく、啓さんにそれを取り上げられた。


「方向音痴なんだべ?」

「え?あ、はい……」

「じゃあ白は止めろ。遭難した時に雪と同化して見つけづらい」

「も、もう遭難なんてしないですよ!」


またそのうち遭難すると勝手に決めつけられていると思うと悔しい。


「派手な色にしたらいいしょ。目立つし」

「………………じゃあ、オレンジにします」


こんな派手な色、東京に住んでた頃には絶対に選ばなかった。
しかしこうも面と向かって遭難を前提にして話されると、悔しさも相まって反抗したくなるのだ。


「あとはズボンと、靴とゴーグルと……」


ブツブツつぶやきながらさっさと啓さんが行ってしまう。
どこに何があるのかも分からない私は、たただ彼の後ろをついて回るだけ。
今日は1日を通して金魚のフンにでもなった気分だ。


その後、ダウンパンツという画期的なズボンを見つけてテンションが上がっていたけれど、「早く選べ」と怒られてブラックウォッチのものを選ぶ。


靴も防水機能の備わった「雪国!」って感じのブーツを手に取る。
ゴーグルは性能とかよく分からないので、啓さんがオススメしてくれた大きな黒いゴーグルにした。