青と口笛に寄せられて



そんないっぱいいっぱいの私を知ってか知らずか、いやたぶん気づいているけれど止めないだけ。啓さんはチラリと私を見やってから何事もなかったように口を開いた。


「シベリアンハスキー、アラスカンハスキー、アラスカンマラミュート」

「………………んん?」

「ここにいる犬ゾリ犬の、犬種」


なぬっ!?
声にならない声を上げて、即座に啓さんをガン見する。
聞いたことのない犬種が聞こえてきましたけど!


「シベリアンハスキー以外知らないしょ」


どこか勝ち誇ったようにそう言った啓さんは、スタスタと犬舎の中を進みつつそれぞれの犬種について説明をしてくれた。


「こいつはシベリアンハスキー。で、そっちがアラスカンマラミュート。大きな違いは体格と尻尾かな。シベリアンハスキーは中型犬で尻尾が垂れてて、マラミュートは大型犬で尻尾は柴犬みたいに巻いてる」

「あー、……言われてみれば……」

「目の色もシベリアンハスキーはブラウンとブルーに分かれるけど、マラミュートはブラウンしかない。で、残りのこのアラスカンハスキーっていうのは、犬種っていうか総称みたいなもんなんだ」

「総称?」

「うん。アラスカンハスキーは混血……要するに雑種。シベリアンハスキーの血が強いとかなり似たような見た目にはなるけどな」


キョトン顔でパタパタ尻尾を振る犬たちをよ〜くじっくり見ていたら、まぁ確かに言われた通り微妙な違いはある。
だけどパッと見て答えられるかと言われるとそれは難しい。
犬種に加えて名前とポジションも覚えなきゃならないなんて、これは一番大変かも。


「あとで携帯で1頭ずつ写真撮るんで、名前とポジション改めて教えて下さい!」

「なるほどね。いいよ、いつでも」


うなずいて啓さんは犬舎の壁に掛けられている革製のハーネスを大量に持ってきて地面にポンと置いた。


「さ、これからが本番だ。こいつらにハーネスを取り付けっから。………………その顔はビビってるな?」

「か、噛みません……よね?」


だってだって、めちゃくちゃでっかい犬もいるんだもん!カイみたいにちょうどいい体格の犬ばかりじゃないんだもん!
でっかい体格の子は、さっき啓さんが言っていたアラスカンマラミュートって犬種なんだろう。