青と口笛に寄せられて



「お?君が新しい子かな?」


どこから現れたのか、50〜60代と思われる男性が私を見つけて声をかけてきた。
その人を、私は今まで一度も見かけたことがなかった。
挨拶せねばと頭を下げる。


「初めまして!滝川深雪と申します!よろしくお願いします!」

「深雪ちゃんね。私は種田です。いつもお宿で雑務をやってるから、あんまり会えないかもしれないけど。よろしくね」


どうやら宿担当とソリ担当っていうのが、明確にってわけじゃないけど一応決められているらしいことがようやく理解出来た。
住み込みで働いている人は私以外に6人って聞いていたから、あと1人まだ会っていないことになる。
そういえば、昨日宿のキッチンで出会った双子料理人の姉妹は住み込みじゃないのかな?


そう思っていた矢先、1台のワンボックスカーに乗って例の双子料理人が出勤してきた。
確か、聖子さんと好子さん。
区別がつかないほど激似の2人。
彼女たちは通いで仕事をしているらしい。


「おはよ〜っ!」って声を揃えてみんなに挨拶していた。
相変わらず、超元気。


やがて泰助さんも除雪作業に参加して、黙々と雪をかいていくこと1時間。
屋根の上の雪下ろしをしていた井樋さんが、私のチマチマぶりを見兼ねて「おい」と呼んできた。


「そんなんじゃいつまで経っても終わらないべさ!」

「す、すみません!」

「もっと一気にスコップに盛れよ!」

「はいっ」


もっともっと力をつけなきゃ!
今夜から筋トレでも始めるか……と、密かに決意したのだった。