携帯にセットしたアラームが朝の4時半に鳴った。
目も開けずにアラームを止めて、また寝入ろうとした…………けれど。


「寝坊したらハーネスつけて東京に引っ張ってっからな」


という世にも恐ろしい井樋さんの言葉を思い出して、頑張って目を開けた。
眠いし、寒い。
これを毎日続けなきゃと思うと、慣れるまでけっこう大変かも。


覚醒しきっていない体を起こして、カーテンを開いた。
昨夜のうちに降った雪が積もったらしい。
見るからに寒そうな外。
てゆーか、まだ夜かって思ってしまいそうなほど真っ暗。


顔を洗って支度をしようとタオルと洗顔料を持って1階に降りる。
足首はやっぱり全然痛くない。
良かった。どうやら治ったみたい。
洗面所で顔を洗って2階へ戻り、着替えを済ませた。


そこでふと手を止める。
メイクってした方がいいのかなぁ。
麗奈さんとか裕美さん並の美人だったらスッピンでもいいだろうけど、私の場合メイクしないとぬらりひょんみたいな顔だから。
化粧水と乳液を塗り塗りしてファンデーションと眉毛まで終わらせた時、廊下で物音が聞こえた。


ドアを開けて廊下を覗くと、ちょうど麗奈さんがジャケットを羽織って準備しているところだった。
すぐに私に気づいて笑顔を見せる。


「あ、おはよう〜。今日からよろしくね」

「おはようございます!よろしくお願いします!」

「起きるの辛くなかった?」

「だ、大丈夫です……」


苦笑いしながら、2人で1階へ向かう。
朝から麗奈さんは爽やかで美しく。女なのに見とれそうになる。
5時までまだ時間があったので、彼女がキッチンでコーヒーをいれてくれた。
ほっこり温かいコーヒーを飲みながら、麗奈さんが「それにしてもビックリしたわ」と楽しそうに笑った。


「まさかここで働きたい、って戻ってくるなんてね」