青と口笛に寄せられて



カレンダーが9月になった。


東京の夏は長い。
残暑は厳しく、家にいたなら冷房はつけっぱなしで過ごしていたことだろう。
入院してから1ヶ月半が経とうとしていた。


私のリハビリは順調に進んでおり、イケメンの理学療法士の先生に手取り足取り手伝ってもらいながら、手すりなしでも歩行できるまでに回復していた。


リハビリの時間以外にも、廊下に出てヨロヨロと歩く練習をする。
少しでも早く前のように歩けるようになりたかったからだ。
なるべく早く紋別に戻りたい、その一心で。


ヘルニアで入院中の南田さんは「今日も頑張るわねぇ」と他人事で、リハビリ以外の時間は基本的にベッドでテレビを見たりしている。
時折、「あの美男美女のご夫婦は来ないのかしら?」と聞いてくる。
よっぽどインパクトがあったらしい。


お昼ご飯を食べてから、うたた寝している南田さんが起きないようにそっと部屋を抜け出して廊下へ出る。
私と同じように歩行練習に勤しむ患者が何人か通行しているので、私もその中に入った。


長い廊下を歩き、ナースステーションまでたどり着いたら折り返す。
これを3回繰り返したら、いったん休憩する。
体力の続く限り毎日やっていた。