青と口笛に寄せられて



すると、それまで黙っていたお父さんがようやく口を開いた。


「…………深雪、それは何歳まで乗れるものなんだ?」

「……………………へ?」

「犬ゾリ」


なんでこのタイミングでその質問なわけ?
やや不思議に思いながら、一応答える。


「年齢なんて決まってないよ。子供から大人まで楽しめるよ。84歳のおばあちゃんも楽しんでたくらいだもの」

「そうか」


お父さんはうなずいて、隣に座るお母さんに笑顔で声をかけた。


「じゃあ次の冬にでも、母さんと行ってみようかな。宿泊施設もあるっていうし」

「お、お父さん?」


お母さんが面食らったように目を丸くしている。
それは私も同じだった。
里沙だけが、フフッと肩を震わせて笑っている。


「こんなに娘が人生観を変えられた犬ゾリだ。親の俺たちも体験してみたいと思わないか?」

「そ、それは…………まぁ……。たしかに乗ってみたいと思っちゃったわね」


お父さんの穏やかながらもしっかりとした意思のある言葉に、お母さんからもついつい本音が漏れる。
畳み掛けるように里沙が加勢した。


「夏は犬が台車に乗せて走ってくれるんだけど、それだけでも超楽しかったよ。しかも姉ちゃん、いつもと全然違うの!めっちゃかっこよかったんだから!」

「ほぉ〜、ますます行ってみないとな」


お父さんはニコニコと晴れやかな笑顔で、私に念を押すように確認してきた。


「深雪、後悔しないんだな」

「…………はい」

「また怪我することもあるかもしれない」

「覚悟してます」

「雪の事故だってあっちじゃ日常茶飯事だぞ」

「はい、分かってます」

「………………やりたいように、やりなさい。父さんたちは応援するから」


私は、お礼を言う前に自分の目から涙がこぼれるのを感じた。
でも、言わなくちゃ。


「ありがとう。私、頑張ります」


目の前にいる、両親と妹が笑ってくれた。
それだけで、私はまだまだ頑張れると思った。