青と口笛に寄せられて



「なんだかあっちは人手不足で大変みたいだわ〜。辞めた私が言うのもアレだけどさ。その上深雪ちゃんも怪我で離脱になって、みんな馬車馬のように働いてるんだってね」


泰助さんは「こっちは心配しなくて大丈夫だから」と私には言ってくれていたけれど、今の麗奈さんの話で状況の深刻さは痛いほどに伝わった。
私が暗い気分になっていると、壮一郎さんも麗奈さんの言葉にうなずいていた。


「紅一点の深雪ちゃんが抜けて、さもむさくるしいことになってるんだろうな、あっちは」

「それが1番だべ、きっと!」

「啓も寂しがってるだろうな」


何気ない2人の会話に啓さんが出てきたので、私は迷わずに「そんなことないです」と口を挟んだ。


「啓さんは私がいなくても……平気なんです」

「………………あら……」


落ち込んだ様子はあまり見せない方がいいことは分かっている。
だけど目の前に麗奈さんたちがいると思うと素直に不安な気持ちを口にしてしまった。


「ねぇ、深雪ちゃん。あなたもう啓のことはしっかり理解出来てると思ってたべ」


麗奈さんは私のベッドに腰掛けて、近い距離で諭すように手を握ってきた。


「啓だって、深雪ちゃんのことが心配で心配でたまらないはずだよ?でも実際問題、啓まで抜けて深雪ちゃんのお見舞いに来るなんてことがあったら、あそこはどうなると思う?もう、一旦営業停止にしなくちゃいけないくらい大変になっちゃうんでないかな?」

「……………………そうですよね……」


なんてことだ。恥ずかしい。
自分のことばかり悲観していたけれど、麗奈さんが言っていることは100%正しい。