私は車椅子に乗せられて、部屋に戻された。
その間にお母さんが看護師やら相談員やらと転院の話をするためにいなくなってしまった。


カーテンに囲まれた狭い空間で、白いギプスで固定された右足を眺める。


東京に強制連行ってわけか。
そうなると本当に北海道へは戻ってこれなくなりそうだ。
私が抜けて、テクラ・ドッグスラッドは大丈夫なのだろうか。


麗奈さんもいない、新人の貴志くんはまだ入ったばかりで見習い中。
私までいなくなったら、あそこは忙しさで大変なことになるんじゃなかろうか。
私がいない間に新しいスタッフを募集して、その人を雇うことにでもなったら……。


私の居場所は、なくなる。
また、居場所がなくなってしまう。


自業自得なのは分かっているけれど、悔しくて悲しくて虚しくなった。


話を終えて部屋に戻ってきたお母さんが、すぐに私の暗い表情に気づいて不満げな顔をして口を尖らせた。


「あら、文句でも言いたい顔ね」

「だって……勝手に決めちゃうんだもん……」

「この機会にゆっくり出来ると思って甘えなさいよ」

「ゆっくりなんて出来ないよ!あっちは人手不足でみんな大変な思いしてるっていうのに!」


お母さんは悪くない。
単純に娘を心配して、いつでも会いに行ける場所で入院していてほしいという気持ちでやっている。
そんなのは分かっている。
だけどやり切れないこの気持ちをぶつける相手は、お母さんしかいなかったのだ。