青と口笛に寄せられて



ここにいる31頭の犬は、それぞれ見た目も性格も違う。


のんびり屋で常にマイペースな子、頭を撫でられるのが嫌いな子、すぐにお腹を見せて心を許す子、嬉しいと高くジャンプしてしまう子、お腹が空いた時だけクンクン鳴く子、警戒心が他の子よりも強い子……。
多種多様なのだ。


その特徴は全て、啓さんが教えてくれた。
犬と、犬ゾリについてのノウハウは、彼の豊富な知識と合わせて私の頭にインプットされている。


こんなに毎日が楽しくて、冬が待ち遠しくなるなんて自分でも驚いている。


犬舎に入ると、犬たちが思い思いに檻の中で過ごしていた。
その1頭1頭に目を配りながら、ゆっくりと彼らの前を歩いた。


「深雪」


犬舎の入口から、啓さんが私を呼ぶ声がした。


少しの期待を込めて振り返ると、そこには啓さんと貴志くんが並んで立っていて私を見ていた。


「もうじき客が来る。準備した方がいいぞ」

「あ、はい……」


返事をして、期待をした自分が嫌になった。


もしかしたら啓さんが、私を引き止めに来てくれたんじゃないかと思ってしまったのだ。
そんなわけないか。
業務連絡、業務連絡。


私は笑顔を作って、「今行きます!」と声を張り上げた。