「どんな子かな」とか「明るい子だといいね」とか、ワイワイ騒ぐみんなの中で、啓さんだけが黙々と会話にも混ざらず食事を続けていた。
斜め前に座る彼に、話しかけてみる。
「きっと犬が好きで、犬ゾリにハマっちゃったんでしょうね」
啓さんからは、なんの反応もない。
あれ?聞こえなかったかな。
「啓さん?啓さーん?」
何度か名前を呼んだら、啓さんがやっと顔を上げた。
その表情はハッと我に返ったような顔だった。
「呼んでた?」
「呼んでましたよ〜。考え事ですか?」
「まぁ……そんなところ」
曖昧に答えて目を伏せる彼を見て、私の中の疑問が膨らむ。
今日の啓さんはおかしい。
あまりにも歯切れが悪すぎる。
もっと毒を吐いたり、悪態をついてくれないと彼らしくない。
「啓さんも政さんみたいに女の子の方が良かったー、なんて思ってたりして」
試しにからかうような口調で言ってやったけれど、それすらも啓さんの耳を通過したらしい。
いつもならば「そんなわけないべ!」とか言い返してきてもおかしくないのに、ぼんやりとひたすらご飯をかき込んでいた。
私はそんな彼を、ただただ寂しく見つめることしか出来なかった。



