季節は夏になった。


北海道には梅雨が無い。
雨は確かに多いけれど、東京に比べたら湿度も低くてジメッとしていない。
そしていつの間にか夏が来ていたのだ。


テレビのニュースでは、ようやく関東地方と東北地方の梅雨明けを発表していて、全国すべて本格的な夏になったようだ。


カラッとしたこちらの夏は、気温ほどの暑さを感じなくて。
東京にいた頃は冷房が無ければ死んでしまうんじゃないかと思うほど暑くて、毎晩エアコンを付けたままで寝ることも多かったけれど、北海道ではエアコンどころか扇風機もあまり使わない。
自然の風で十分涼めるし、日陰に入れば少しひんやりもする。


厚い毛に覆われた犬たちはちょっぴりしんどそうに舌を出しているものの、この間啓さんが一斉に彼らの毛を短く刈ったので少しは涼しくなったらしい。


この数ヶ月間の間に起きた変化。
麗奈さんがテクラ・ドッグスレッドを去った。
それくらいだった。


しかし、長年勤めていた彼女が抜けた穴は非常に大きく、しばらくは従業員みんながてんてこ舞いの日々。
冬の繁忙期にも似ていると感じるほど、2ヶ月くらい休みなく働いた。
宿の夜勤というもの(基本的に仮眠室待機で、万が一夜中に宿泊客から何かトラブルや申し付けがあった時に対応するだけ)を何度か経験したりもした。


少しずつみんなで麗奈さんの穴埋めをするべく、協力しながら宿の仕事を分担しているうちに要領を得てきて、休みもチラホラ取れるようになってきた頃だった。


夏休みシーズンということもあり家族連れのお客様が多く宿泊し、そしてその他の体験ツアーへの申し込みも徐々に立て込んできたのだ。


ネイビーのVネックのシンプルなTシャツの袖をまくってノースリーブにして、首には黄色いタオルを巻いて、プチプラで買った淡いブルーのデニムに黒のコンバース。そして仕上げに日焼け防止用に白いキャップをかぶる。
それが夏の私のスタイルになりつつあった。