青と口笛に寄せられて



そのあと、美味しい夕飯を食べた私と里沙は、子供の時以来だと思うんだけど、2人でお風呂に入った。
だけど、里沙の方から「久しぶりに一緒にお風呂入ろうよ」と誘ってきたのだ。


「いいねぇ、姉妹仲良しだねぇ」


私たちが揃って「お風呂いただきまーす」とリビングに声をかけたら、泰助さんがそんなこと言ってほっこりしたように笑っていた。


「まさか1泊しかしていかないなんて驚いたよ。もっとゆっくりしていけばいいのに」


大きな家にそぐうように、この家の浴室は広い。
湯船もうちの実家の倍はある。
バフタブに2人で向かい合うように座りながら、私はお湯で顔を濡らして正面の妹に言った。


「大学も4年ならもうほとんど行く必要も無いでしょ?」

「単位は問題無いんだけどね。バイトそんなに休めないし」

「そっかー」


里沙は都内のまぁまぁ頭のいい大学に通っていて、家庭教師のバイトとファミレスのバイトを掛け持ちしているのだ。
それを知っているので強くも言えない。


「それに、姉ちゃんに会いに来たのは、私の意思じゃないの」


私と同じように長い髪をぐるぐるまとめて頭の上にお団子を作って、肩までお湯につかる妹をまじまじと見る。


「里沙の意思じゃなかったら誰の意志なのよ?」

「…………………………お母さん」

「お母さん?」


眉を寄せて聞き返した。


あの、なんでも笑い飛ばすお母さん?
能天気で楽天家で細かいことは気に留めないお母さん?
夜遊びして帰っても「痴漢には気をつけなさいよ〜」ってくらいしか声をかけてこないお母さん?


なんで急に心配してるわけ?


私の頭の上にははてなマークが並んでいたに違いない。