青と口笛に寄せられて



流行モノの洋服や靴はいらない。
派手な色のアイシャドウもいらない。


私が欲しいのは、動きやすくて清潔感のある服と、軽くて歩きやすい靴。
仕事中はほとんどメイクなんて必要ない。
欲しいのは、お風呂上がりにつけるしっとり効果のある化粧水と乳液くらい。
自分にかけるお金が減っていく分、無駄遣いもしなくなったから貯まっていく一方だ。


世渡り上手な妹は私には文句しか言わないくせに、すれ違う従業員のみんなには愛想よく振る舞う。
恐るべし、となんとなく顔が似ている自分の妹を褒めたたえたくなった。


「犬舎に啓さんがいるから、台車使っていいか聞いてみようね」


私と妹が犬舎へたどり着くと、そこには啓さんと政さんがいた。
政さんもすでに先ほど家の中で里沙と会い、簡単な挨拶は交わしていた。


「お、深雪ちゃんと里沙ちゃん!」


早速政さんが私たちに気づいて笑顔で手を振ってくれた。


「妹を犬ゾリ体験させたくて。台車借りられますか?」

「いいよ〜。な、啓?」

「うん。何頭使う?台車はソリより重いから多めに連れてった方がいいぞ」


私の申し出をすんなり承諾してくれた啓さん。
政さんの後ろで作業していたのを、わざわざ手を止めてこちらまで来てくれた。


「じゃあ6頭にします」

「みんなナマって走りたがってるみたいだから、ご自由に」

「はーい。ありがとうございます」


返事をして、適当に6頭見繕って1頭ずつ檻から出し、素早くハーネスを装着していく。
この取り付けるのも、ここへ来たばかりの頃は手間取って時間がかかっていたけれど、今はものの十数秒でこなせるようになった。


妹は私の手早い動きを見て、呆気に取られていた。