私は退屈そうな里沙に、ありったけの気持ちを込めて仕事の楽しさを説明した。
1日の仕事の流れ、時間ごとに決められているやるべきこと、流れる時間のゆったりさ、人の温かさ、そして犬の可愛らしさを。
「雪が積もった朝は基本的に5時起きなの。雪かきしなくちゃならないから」
「うげ。無理〜」
「朝が1番忙しいのよ。犬ゾリ犬の体調チェックとか、体調に合わせた餌づくりをしなくちゃならないから。その時に犬たちに挨拶するの。今日もよろしくねーって。ギュッて抱きしめるとあったかいのよ〜。あとはソリの点検と、ハーネスの点検と〜」
「全部犬が中心じゃん。つまんない」
「犬ゾリ体験がメインの場所だからね。来週からは内容を変えて、犬ゾリ犬のお世話を出来るものとか、牛の乳搾り体験とか、乗馬体験とか……」
「大自然って感じだね…………。服とかどこで買うの?」
ことあるごとに、妹がつく悪態。
どうして細かく説明しても分かってくれないのか、私には理解出来ない。
「もう〜、そんなに文句言わないでよね。ちょっと行けばちゃんとショッピングモールだってあるんだから!」
「姉ちゃんが好きで買ってたブランドの服はあるわけ?」
「無いわよ!もう必要ないの、そういうのは」
プンスカ怒って先を歩いていると、後ろからついてくる里沙がボソッと小さくつぶやくのが聞こえた。
「姉ちゃん、変わったね……」



