「分かりやすーい。へぇ、元彼とだいぶタイプ違うね〜。何がいいの?北海道弁?」
「ほ、北海道弁だけじゃないもん!あ、でも、北海道弁もいいけど。…それだけじゃないよ!色々あるの!ほっといてよ〜」
「もしもあの人と別れたら、またここ辞めるとか?」
妹の冷静な指摘に、私は一瞬言葉を失った。
怜の時とはまた状況が違う。
「あのねぇ、里沙。啓さんは浮気なんかしないってば」
怜はかなり明るい性格で、非常に女の子ウケのいい言葉を選び、そして彼女であろうとなかろうと優しく接する軟派な男だった。
それにまんまとハマった私は、そんな誰にでも優しいところがいいなと思ってしまったのだ。
だけど、啓さんはどちらかと言うと硬派だと思うんだよね。
確かにお客様には優しいけど、恋愛に発展するほど優しくはしない。一線を引いているというか。
妹が脱ぎ捨てたコートを整えながら言い返した私に、彼女は胡散臭そうな視線を送ってきた。
「浮気されなくたって、性格が合わなかったりケンカして別れるパターンもあるじゃない。そうなってもここにいられるわけ?」
「いるよ……。私はここの仕事が好きなんだもの。犬ゾリの楽しさを、観光に来た人たちに伝えたいの」
「………………ふーん。姉ちゃんさ、あの人のこと相当好きでしょ。見てれば分かるよ。あの人と温度差感じるよ」
「あ、うん…。大丈夫、それは」
なにしろポーカーフェイスが得意な人なので。
啓さんが甘い顔を見せてくれるのはベッドの中だけだということは、昨日と今日ですでに身をもって知ったことだ。