青と口笛に寄せられて



バスターミナルには、すでに妹の里沙が到着していた。
予定よりも少し早く着いたようで、ベンチに腰かけて寒そうに身をすくめて私たちを待っていたようだった。


車を降りて「里沙!」と声をかけると、妹が慌てたように顔を上げてキョロキョロと私を探しているのがよく分かった。
数ヶ月振りに見た妹は、最後に会った時となんら変わりなく。
相変わらず意思の強そうな目をしていた。


「あ、姉ちゃん!良かった〜、会えた〜」


見知らぬ土地にポンとやって来たのだから、里沙も多少なり不安があったようだ。
でも私の顔を見て安心したように肩を落としていた。


「てか、マジで住んでるんだね〜。なんかここに来るまで全然実感沸かなかったよ」

「なによそれ、今さらじゃない。まず遠いところ来てくれてありがとね、里沙」

「ん、別に〜」


コキコキと首を鳴らして旅疲れをひっそりアピールした里沙は、私に東京土産の袋をドサッと渡して素っ気ない態度を取る。
こういう反応も慣れっこだ。


「里沙、紹介するわね。紋別でお世話になってる、先輩の井樋啓次郎さん」


運転席からわざわざ降りて待っていてくれた啓さんを、早速妹に紹介する。
里沙はまじまじと啓さんの姿を上から下まで見て、ギョッとしたように目を見開いていた。


「うわっ、外人さん?ハジメマシテ〜。タキガワリサデス〜」

「日本人だ、俺は」

「わぉ、ほんとだ!日本語しゃべってる!よろしくお願いしまーす」


私と里沙は後部座席に乗り込んで、それを確認した啓さんが車を発進した。