「返事がないってことは諦めるんだな。そうか。もったいないなあ」

「…………きらめません」

「なに?聞こえないわ」


耳をすませる仕草をわざとらしくする啓さんは、相当意地が悪い顔をしていた。
口も悪い上に意地も悪いなんて、これは困った性格だ。
でもそんな人に惚れてしまったのは私なんだからどうしようもない。


「諦めません!」


そう言って、両手を啓さんの首に回した。
同時に彼の唇が降ってきて、私のそれに重なる。


「安心した」


すぐに顔を離した彼は、それだけ言って笑った。


長めの髪の毛からのぞく青い瞳は、今までの中で一番近くにあってよく見えた。
キラリと輝いている。
どこまでも綺麗で、どこまでも青い。
その瞳に自分の姿が映っていると思うと恥ずかしい。


「深雪に好きな人がいるなら諦めようと思ってたけど、その相手が俺なら問題ないべさ」

「…………それってつまり、要するに……」

「好きってことだわ」


即座に答えた啓さんはそのまま私の唇にまたキスを落とした。
今度は、触れるだけじゃない深いものを。


痺れるような熱いキスに、酔いしれて力が抜けていく。
さっきまで飲んでいたお酒が全身に回ってきたみたいに心地いい。