「酒はいいんだけどさ、プリンは?」
頭に巻きつけていたタオルを取って、濡れたお団子頭のまま缶チューハイを開けようとしたら、啓さんにプリンのことを言われて思い出した。
しまった、楽しみにしていたはずなのに忘れていた。
冷蔵庫からプリンを出して、啓さんの分は手渡しする。
2人で深夜番組を眺めつつ、お酒を片手にプリンを食す。なんだかアンバランスな組み合わせ。
お互いに自分のベッドに腰かけて、そのベッドの間には私がシーツで引いた境界線。
テーブルに置いていた携帯を取って、画面をつけると実家のお母さんからメールが来ていた。
『今日は東京はなんと20度を超えました。北海道は寒いんでしょうね。まだ雪は残ってますか?』
私が北海道に住むようになってから、時々こうして日記のようなメールが届く。
お母さんはお母さんなりに寂しいみたいで、空いた時間に電話やメールはするようにしていた。
「今日、東京は暖かかったみたいですよ」
グレープフルーツの酎ハイでゴクゴク喉を鳴らしてからそう言うと、啓さんは「そうみたいだな」と驚くこともなくうなずいていた。
「さっきニュースでやってた」
「あ、そうですか……」
「親から?」
「はい、メールが来ていて。一応、楽天家のお母さんでも私のことが心配らしいです。都内で一人暮らししてた時とはまた違う状況なので」
苦笑いして話す私に、彼は食べ終わったプリンの容器をテーブルに置いて黙って聞いていた。



