今夜は絶対に眠れない。
誓って言える。
だって隣のベッドには啓さんがいて、きっと健やかで無防備な寝顔を見せるんだろう。
そんなの見たら精神状態がおかしくなる気がする。


ということで、まずは現実逃避の準備を始めましょう。


「私、外のコンビニでちょっと買い物してきます!」


お財布を片手に脱いだばかりのコートを着て、部屋の鍵を握りしめた。
スリッパから靴に履き替えて、部屋を出る前にベッドに腰かけている啓さんの方を見やった。


「もし良かったら、先にお風呂どうぞ。それでは行ってまいります」

「…………いってらっしゃい」


啓さんの表情は怪訝そうなものだった。
とんでもない不審人物とでも思われているんじゃなかろうか。
本当に本当に、政さんを心から恨んだ。
なんでこんなことを。
私の気持ちを知ってるくせに。
啓さんと麗奈さんの関係も知ってるくせに。


肌寒い外に出て、すぐ隣のコンビニに入る。
明るい店内にはパラパラとお客さんがいて、私と同じようなホテルの宿泊客っぽい人も見受けられた。


お酒を飲もう!
とにかくお酒を飲んで飲んで飲みまくって、ベロンベロンになるまで飲み尽くして、その勢いで寝よう。
私に残された道はそれしかない。


コンビニの奥にあるドリンクコーナーで、ビールと酎ハイの缶をドサドサと買い物カゴに入れる。
ついでにチー鱈とサラミも。
お酒のおつまみには北海道産の氷下魚っていうのが最高に合うんだけど。
コンビニには売ってないし。
氷下魚を泰助さんにもらって食べた時は感動したなぁ。


ズッシリ重くなった買い物カゴをレジまで持っていって、会計を済ませたあとコンビニを出た。