しかし。
そんなのほほんとした私の考えは、このあと急展開を迎えることとなる。
それをまだ知らない。


この札幌の街中に位置するビジネスホテルで、叫ぶことになろうとは。










「井樋様ですね。……はい、ご予約確認出来ました。ツインルーム1室ですね」


政さんが予約してくれていたビジネスホテルは札幌駅からすぐそばにあって、車は歩いて3分ほどのパーキングにあらかじめ停めていた。
宿泊客の出入りも激しく、コンビニも隣にある立地のいいビジネスホテルのフロントに、私と啓さんは立ち尽くしていたのだった。


「は?」


目を丸くして啓さんがフロントに立つ若い女性に聞き返した。


「もう一度確認してもらえませんか?シングル2部屋でお願いしてたと思うんですが」

「え?いえ、ツイン1室ということで承っておりますけれど……」

「………………なんで?」


なんで、と申されましても。
従業員の女性は恐縮した様子で困ったように啓さんを見つめ返している。
私はというと、カチンコチンに固まって、事態を飲み込めないでいた。


ツインルームって聞こえたけど、どういうこと?
ツインルームって何?
ベッドが2つ置いてある部屋じゃなかった?
ということはひとつの部屋で啓さんと過ごすの?


妄想よ、消え去れ!
ブンブンと大きく頭を左右に振っていたら、隣の啓さんの肩にぶつかってしまった。
「イテッ」とつぶやかれ、睨まれる。
うぅ、怖い。