青と口笛に寄せられて



すすきのにある侍プリンを売っているお店でそれを2つテイクアウトした私と啓さんは、その足で居酒屋へ向かう。


金曜の夜ということもあり、通りはものすごく混んでいた。
さすが夜の街、すすきの。
お目当ての居酒屋も、並んでいる人が何組かいた。


最後尾に並んだとして、どのくらいで中に入れるんだろう。
不安になっていると、さっさと店内に入っていく啓さんを見て慌ててあとを追った。
当たり前のように彼は私に言った。


「混むのなんて目に見えてるしょ。予約しといた」


…………もう彼に足を向けて寝られません。
神様、仏様、啓次郎様!!
ありがとうございます!!


念願だった、イクラたっぷりのつっこめし。
テレビで見てから絶対に行ってみたいと思っていたお店のひとつだった。
熱々のご飯がテーブルに運ばれてきて、元気のいいかけ声と共にお茶碗にわんさかイクラが盛られていくのだ。
「ストップ!」って言うまで止めない。
なんて素敵なシステム!


普通盛りのお茶碗にしようと思っていたら、啓さんに止められた。


「でかいご飯茶碗に、ギッチリ米が詰めてある。女1人じゃ食べ切れる量じゃないからハーフサイズにしておけ」って。


すでに球場で軽食もとっていたしお酒も飲んでいた私は、本当なのかしらと若干疑ってハーフのつっこめしを注文したけど。
彼の言ったことは本当だった。
ハーフサイズでもかなりの量だったのだ。


「啓さんって物知りですねぇ」


たっぷりのイクラを口に頬張りつつ目の前に座る啓さんを褒めちぎる。


「なんていうか、札幌通っていうか」

「いいや。俺より政の方がもっと色々知ってるわ。プロ野球シーズンしかこっちは来ないしな」

「それでも予約とかしてくれて嬉しかったです」

「まぁそれくらいは、ね」


頬杖をついてビールを飲む啓さんは、優しい目をしていた。
ううーん、幸せだ。