まるでデートみたいだわ、と助手席に身を沈めながら窓の外に視線を移した。
天気もいいし、お天道様まで味方してくれているよう。


「まずは……テレビ塔とスープカレーですね……」


うっとりしながらつぶやいて、頬を緩める。


「それからそれから、ペンギン堂でしょ、侍プリンでしょ……」

「おい、野球は?」

「あ、もちろん楽しみです!」

「観光メインなんだべ、どうせ」


啓さんの鋭いツッコミに、苦笑いしか返せない。
本当は野球も観光もどっちも楽しみだ。
だって、啓さんと一緒だから。
そんな啓さんが運転しながら口を開く。


「スープカレーは奥芝商店にしようと思ってる」

「ん?そこ聞いたことありますね。昨日ガイドブックに載ってるの読みましたよ!」

「うん。人気店だから。ミーハーな深雪にはちょうどいいべ?」


軽く失礼なことを言われているというのに、それもあまり気にならない。
それよりも気になることは2日目のことだ。


「あのー、ラーメン屋さんはどこに行くんですか?」

「ほんっとに食いもんのことしか頭にないんだな」

「すみませんっ」


もうなんとでも言ってください。
私は食いしん坊なんです。
開き直ってガイドブックを開いて胸を弾ませる。