青と口笛に寄せられて



軽い口調ではあるけれど、案外親身になって話を聞いてくれる政さんは話しやすくて。
ついつい悩みまで打ち明けてしまった。


「でもね、私が幸せになればなるほど、色々思っちゃうんですよ……。啓さんの……彼女のこと…………」


啓さんが麗奈さんとの関係を変えるつもりがないのは分かり切ったことだし、私のようなここに来て数ヶ月の人間が2人の長くて深い歴史に割って入ることなんて不可能だ。
強い信頼関係があるからこそ、麗奈さんも「楽しんできてね」なんて言ったんだろう。


ズーンと暗い気分になった私に、政さんがおそるおそる声をかけてくる。


「深雪ちゃんさぁ、啓には聞いたの?その彼女のこと」

「聞いてませんよ。聞いてませんけど、分かりますよ。あんなにいい雰囲気っていうか、なんでも分かり合ってる空気感っていうか」

「………………ちなみに……、もしかして、彼女って麗奈だと思ってる?」

「もしかしなくてもそうですよね?あの2人、初めて見た時からお似合いだなって思ってましたもん。美男美女で、並んでるだけで華があって……」

「うぅーん、なるほどねぇ〜」


政さんは悩ましげに眉を寄せて、私から目をそらした。
何をそんなに悩む必要があるのか皆目検討もつかないけれど、まぁ幼なじみ同士で色々複雑な気持ちがあるんだろう。
それくらいに思っていた。


だから気にも留めずにガッツポーズを作って笑顔を向けた。


「とりあえず、邪魔するつもりはないんで!今回は札幌観光を楽しんでこようと思ってます!ドームに行くのも楽しみだし」

「…………よし、俺も決めた!」


私の決意と同時に政さんが急に立ち上がった。
彼もまた、ガッツポーズを作っている。


「こうなりゃ強硬手段だべ!ちょっと電話してくる」

「どこに?」

「ちょっと、ね」


ソリのメンテナンスも途中だと言うのに、彼はそそくさと倉庫を出ていってしまった。


この彼の行動が、後の私の運命を大きく変えることになろうとは。
夢にも思っていないのだ、この時は。