マイナスの冷気にまみれて一気にその場に凍りついた私。
おそらく目とかこぼれそうなくらい見開いていたと思う。それほどに啓さんがそこにいたということに驚いた。
嘘でしょ?
啓さん、どこから聞いてただろう?
彼もまた驚いたような表情を浮かべていたけれど、それはすぐに元に戻った。
手袋をつけながらいつものようにあまり愛想がいいとは言えない微妙な顔で怜に微笑んだ。
「あと5分ほどしましたら、ガイドから声がけ致します」
「あ……、分かりました〜」
怜はヘラッと笑って返事をして、コソッと私のそばまで来て声をひそめる。
「なぁ、深雪。あの人ってカラコン?」
「………………8分の1」
「はぁ?」
「8分の1がカナダ人」
「え?なになに?」
「もうっ!うるさいっ!」
こっちは頭の中が混乱してるっていうのに、そんなことをいちいち聞かないでほしい!
完全に怜に八つ当たりしてるようなもんなんだけど。
当の怜はというと、困惑した顔で苦笑いしていた。
「なんか、北海道に来てからキャラ変わったな、お前」
とかつぶやいている。
キャラも何も、私は変わったつもりは無い。
啓さんの口の悪さが移っただけだと願いたい。
犬たちの様子をひと通り見ている啓さんを眺めて、私は「はぁ〜」と深いため息をつくしかなかった。
万が一気づかれてたらどうしよう。
私の好きな人が啓さんだって。本人にバレたんじゃ気まずくて仕方ない。
2人で動き回ることも多いし、もしかしたら麗奈さんにこのことが知られてしまうかも……。
ほとんど無意識に口から愚痴が漏れる。
「あー、とんでもないことになった……」
「ん?どうした?」
「怜のせいなんだからっ!」
「ええええええ?」
キョトン顔の怜にイライラする。
こんな男に惚れてた私って、なんてバカだったんだ!
「北海道に来てやったんだからやり直してくれてもいいだろ」みたいなことを言ってたぞ、さっき。
それってどうなのよ。なんで上から目線で言われなくちゃならないのよ。



