青と口笛に寄せられて



どう世界が変わるのか、知りたくなった。


なにしろ私は2週間前、あらゆるものを失った。
いや、自ら手放した。
もういい、傷つくくらいならいらない、って。
悲しいほどの虚無感と、切ないほどの焦燥感。
私ってなんのために生きてるのか。


25年間、持ち前明るさと愛嬌の良さで人生を乗り切ってきた私。
ちょっと抜けてる部分があるのは自分でも分かってるし、方向音痴ってことももちろん知ってる。
見た目なんて取り立てて美人でもなければ、可愛くもない。


そんな私が、変われるのかな。
犬ゾリに乗るだけで、変わるって言うのかな。
嘘みたい。


嘘みたいだけど、試したい。


「深雪ーーー!ヤバいよー!バス行っちゃうよー!乗ろーーー!」


焦った様子の歩美が、バス乗り場のそばで私を呼んでいる。なるべく大きな声になるよう、両手を口に添えながら。


迷い、葛藤、迷い、葛藤、迷い。
色んなものと戦って、私が出した答え。


「歩美ー!ごめーーーん!」


響くような大きな声で、遠くにいる歩美に向かって叫んだ。


「バスには乗らないからーーー!」

「えーーー?なにーーー?」

「バスには乗らないーーー!」

「えっ?ええええええええ!?」

「もう少し北海道に残るからーーー!歩美、ごめんねーーー!先に東京に帰ってーーー!」


大声で会話し合う私たちは、他の観光客の注目の的だ。
でもそんなの気にしていられない。
ポカンと口を開けたまま呆然としている歩美に、よりいっそう大きな声で叫ぶ。


「歩美ーーー!ほんとにありがとーーー!私、頑張るからーーー!」

「ちょ、ちょっとーーー!深雪!」


困ったように泣きそうな顔になった歩美だったけれど、ハッと我に返ったらしい。
とりあえずバスに乗らなきゃ、という気持ちが勝ったようで、両手を合わせると


「先に東京帰ってるからねーーー!」


と言って、バスに乗り込んでいった。