青と口笛に寄せられて



まだ歓談中のみんなを置いて、私と怜は北風吹きすさぶ外へ出た。
中で話そうものなら色々な人に話を聞かれそうでちょっと嫌だったので。


怜はブルッと身震いしつつ、外の屋根付きの簡易小屋で休んでいる犬たちを眺めていた。


「お前さぁ、マジでここで働いてんだな……。実際に来るまでは正直信じられなかったよ」

「そうだよね……、自分でもビックリしてるよ」


あはは、と意味もなく笑う私。
何故ここで笑っているんだ!と虚しくもなってくる。でも、「バカ野郎!」とか「浮気者!」とか罵るのはなんか違う気がして。
とりあえず怜に言いたいのは浮気うんぬんっていうところじゃないのだ。


「あのさ、怜…………。軽くストーカーだよ?」


私の一言がグサリと刺さったらしく、怜は非常に気まずそうに目をそらした。


「や、やっぱりそう思うよな……」

「ストーカーなの?」

「そんなわけねぇだろ!」

「じゃあどうして遠路はるばる紋別まで来たのよ?」

「それは………………、やり直したくて」


しゅんとしたように肩を落とす彼の姿は、なんだか私の知らない人みたいだった。東京で一緒に働いていた頃は、無駄に自信に溢れていてポジティブなことしか口にしていなかった怜。
もしかしてあれは、いいところを見せようと必死だったのかもしれない。


「今さら無理でしょ、どう考えてもさ。普通に考えてみてよ、アレはアウトでしょう?」

「悪かったと思ってるよ!魔が差したんだ」

「理由はなんであれ、私はもうダメなの。1回くらいの浮気で、って思われるかもしれないけど、無理なの…………」


言葉を発するたびに口から吐き出される真っ白い息は、それ以上に真っ白な雪の背景に溶けて消えていく。
あの時あの瞬間は言えなかった、自分の気持ちと向き合う。
それはなかなかの苦痛を伴う作業でもあった。