青と口笛に寄せられて



普通の女の子がどうなのかは分からないけれど、浮気されたと分かった瞬間、私の中から怜への愛情は一瞬にして冷めた。
どうにかして自分の元へ戻ってきてほしい、とかいうような情熱も一切湧いてこなかったのは事実だ。

それは久しぶりに彼を見た今も、同じだった。


「深雪」


視線を落としていると、啓さんが名前を呼んだ。
なんだろうと顔を上げると、彼はポンと私の頭に手を乗せた。


「いつも通りに笑え。犬たちも不安になっから」

「…………はい」

「笑ってる顔の方がいいんだわ、俺も」

「はい、分かりました……。……って、えっ?」


思わず聞き返したものの、その時すでに啓さんは私のそばからいなくなっていた。


今、「俺も」って言った……よね?
聞き間違いじゃない、と思うんだけど。
それってどういう意味なんだろう。
いや、きっと深い意味は無い!私はヘラヘラ笑ってる方が私らしいって意味なんだ。


1人であーでもないこーでもないと考えていたら、政さんがニコニコ笑顔で私を見ていた。


「うんうん、いいねぇ〜。微笑ましいね〜」

「微笑ましい?」

「こっちの話〜」


この間からやけに含んだ言い方をする政さん。
突っ込んで聞きたいけど、彼は茶化して話してくれないに決まっている。


「元彼くん、さっきから深雪ちゃんのことチラチラ見てるね。気づいてるんだべなー」


ふと私の後方へ視線を向けた政さんがボソッとつぶやく。
後ろを振り向こうか迷うところではあったけれど、話しかけられるまではこちらからはアクションを起こさないことにした。