青と口笛に寄せられて



泰助さんと裕美さんも同様。
声こそ出さないもののかなり驚いた表情を浮かべている。
啓さんは……っとどうせ独白した時みたいに笑ってるんだろうから見ないでおこう。


その間にも政さんから矢継ぎ早に質問を浴びせられる。


「なんで元彼がここに来るわけ?浮気相手と旅行にでも来るんだべか」

「いや〜、1人で来るらしいです……」

「なにそれ!深雪ちゃんのこと追いかけてくるってこと?」

「そこまでは分からないんですけど、どうやらヤツは私の実家にまで押しかけたらしくて……」

「怖っ!普通にストーカーだべ〜!」


同じ感想を持ってくれたからついつい思わず笑いそうになって思いとどまる。
笑うところではない。


「予約いっぱい、ってことにして、キャンセルしてもらってもいいんだよ?」


気をつかったように泰助さんが声をかけてくれる。
私が北海道に来た理由が、なんとなくどころか完璧に分かったらしい。
失恋して傷心旅行なんて、呆れてるんじゃないだろうか。


「泰助さん。その必要は無いですよ」


それまで黙っていた啓さんがソファーから立ち上がってゆっくりこちらへ向かってきた。


「いい機会だ、深雪。雪流しの刑にすりゃいい」

「雪流し?」


なにやら不吉な言葉を平然と述べた啓さんは、ニヤリと笑みを浮かべた。
何かを企んでいるような顔。
こんな時だっていうのに、この人はこういう悪そうな顔もするのねと余計なことを考えてしまった。


加勢するように政さんがフフフと笑う。
啓さんの「雪流しの刑」を聞いて、なんだかすごく楽しそうな顔をした。


「啓、たまにはいいこと言うじゃないか」

「こらこら、お客様よ!」

「裕美さんも聞いたろ?そいつ人でなしじゃん!刑に値するしょ」

「………………」


政さんと啓さんは、顔を見合わせて何故かものすごく通じあっていた。
きっと彼らは小さい頃からこうやって悪巧みを考えていたんだろう。それだけは分かった。


さて、雪流しの刑とはいかに………………。