青と口笛に寄せられて



しばらく画面に目を通していて気がついた文字。
何度も何度も見直したけど、間違いない。


『甲本怜 26歳 男性 東京都 1人参加』


数日後の連休を利用して犬ゾリの体験ツアーを予約していた。
さすがに宿の方は予約していないみたいだったけれど、これはマズい。ひたすらマズい。


画面の1点に集中してじーっと見ていたら、横から大きな手が伸びてきて、私の顔がグイッと無理やり方向転換させられた。
目の前には政さん。


「深雪ちゃ〜ん、挙動不審〜。何かあったべ〜」

「い、いやぁ、それは……」


ポリポリ頬をかいて目をそらすと、昼間にもされた時と同じように両手で両頬を押さえつけられた。
おそらく1番ブサイクであろうこの顔。
視界には私を呆れたように遠くから眺める啓さんの姿。


「知り合いでも来る予定になったの?」


何気なく言われたその裕美さんの言葉がなかなか鋭い。やはり女はカンがいい。


「知り合いというか…………」


目を泳がせる。
なんて言えばいいのやら。
少し迷ったけど、もう隠すのも面倒でそのまま告げた。


「浮気されて別れたはずの元彼が、ここに来るみたいです…」

「…………ええええええええ!?」


即座に反応したのは政さんだった。
私の顔から反射的に手を離して目を丸くしている。