青と口笛に寄せられて



歩美が制止するのも聞かずに、私は一目散に彼の元へ駆け寄った。
あんなに痛かったはずの足首が、寒さのせいで痛みをあまり感じなくなっていた。
カイがパタパタと尻尾を振り出している。


「すみません、私、さっき助けてもらった者です!滝川深雪といいます!」


ペコッと頭を下げると、中年の男性が朗らかな笑顔を浮かべた。


「無事で良かった。気をつけて帰ってくださいね」

「はい……。あの、さっきは、ありがとうございました!ほんとに、見つけていただいてなければ私はきっと死んでたと思うし、それに……」


考えがまとまらないまま矢継ぎ早にまくし立ていると、戸惑ったように男性が慌てて首を振った。


「あ、あ、ちょっと待って!勘違いしてるね」

「へ?」

「さっき君を助けたのは違う人だ。急いでたから、私のダウンを貸したんだ。本人には伝えておきます」

「あ……、そうですか……」


確かに言われてみれば、体格がまるで違う。
もっと身長はだいぶ高かった。
それに、声ももっと低かったような。
うろ覚えだけど。


肩透かしを食らった私の足元に、先ほどと同じようにカイがすり寄ってくる。
フワフワの毛先が、触ったら気持ちよさそうだなって思わせる。
そっと頭を撫でてやると、カイは青い目を細めていた。


「へぇ、珍しい。カイが触らせるなんて。普段は私たち以外にはあまり懐かない子なんですよ」


意外そうに男性が目を丸くして、しゃがんでカイの体を撫でてあげていた。
「この人が気に入ったのかい?」などと話しかけている。


「滝川さん。観光で来たなら、1度ぜひ、ちゃんと犬ゾリ体験してみて下さい。世界が変わりますよ」


カイと触れ合いながら、男性が私に笑いかける。
彼の言葉が印象に残った。


「………………世界が変わる…………」