青と口笛に寄せられて



その夜、妹から電話が来た。
お母さんからはしょっちゅう電話やメールが来て、私が楽しくやってるのかどうかを聞いてはケラケラ笑うっていうのが多かったから、妹からの着信に戸惑った。


お風呂上がりのホカホカの体を冷やしたくなくて、部屋に戻ってすくにストーブの前に陣取る。


「里沙、どうしたの急に?電話なんて珍しい」

『姉ちゃんさぁ、いつまで北海道いんの?』

「ん?おやおや〜、寂しくなったのかい?」


妹よ、可愛いところがあるじゃないか。
ニヤニヤと笑いながら茶化すと、それを覆すようなことを里沙が言いのけた。


『今日ね、姉ちゃんの彼氏がうちに来たよ』

「…………………………え?」


一瞬、何を言われたのか分からなくて頭が真っ白になる。
彼氏?誰の彼氏?どこのどいつのことを言ってんだ?


「えーっと、里沙。ちょっと落ち着こうか」

『あたしは落ち着いてる』

「お、おお、落ち着いてみようか」

『姉ちゃんテンパりすぎ』


確かに妹の声は死ぬほど落ち着いていた。
当たり前だ。だって姉のことなんだもの。
いつも私たちはこんな感じだった。私がアタフタしていて、里沙はどっかり腰を据えて落ち着いている。


『ケンカでもしたわけ?連絡取ってないの?北海道にいるって知らなかったみたいで、めちゃくちゃビックリしてたよ』

「ね、ねぇ里沙。その人って……誰?」


念のため、念のため。
知らない人かもしれないし。いやそれだと逆に怖すぎるか。
完全に思考回路がおかしなことになっている私の言動に、呆れたような里沙の返答が耳に届いた。


『姉ちゃん、彼氏の名前も忘れたの?どんだけそっちで人生謳歌してんのよ。甲本怜って名乗ってたよ』


わあ……………。
怜だ。紛れもなく怜だ。
可愛くて巨乳の後輩の山田と浮気した、私の元彼・怜だ。
何故に私の実家にまで!?