「むしろ、この美より平仲さんの方が勉強できるんじゃないかな？　この美はいつもこのノートを頼りに勉強しているだけだしね」


あたしが考えていたことを京一郎はそのまま言った。


やっぱりそうだったんだ。


京一郎が教えてくれていたからこの美でも1位という順位が取れただけ。


それなら、あたしと京一郎が付き合えば更に注目のカップルになれるはずだった。


「時々思うんだ。この美はいつも俺の勉強を横取りしていい結果を残してるだけだって……」


京一郎がため息を吐き出す。


「そうなんだ……それは辛いよね」


「あぁ。この美の事は好きだけど勉強の為に利用されてるのかなって思っちゃってさ」


あたしは内心ニヤリと笑う。


一見順風満帆に見える2人には、見えない亀裂がある。


京一郎には付け込む隙がないと思っていたけれど、それは大間違いだったようだ。


あたしにも十分にチャンスはある。


「京一郎はとっても魅力的だから、そんなに落ち込まないで」


あたしはそう言い京一郎の手を握りしめた。


あくまで自然に、クラスメートを慰めるように距離を縮めていく。


「ありがとう平仲。なんだか少し照れるな」


そう言って頬を染めた所へ、歩いていてバランスを崩した果歩がぶつかってきた。