あたしはため息を吐き出して口を開いた。


「あたし、他に好きな人ができたの」


その言葉に明彦は一瞬目を見開いた。


予想外の言葉に明らかに動揺している。


「ど、どういう事だよ、それ」


「言葉通りだよ? 明彦よりも好きな人ができた。だから、明彦とはもう付き合えない」


少し目を伏せて体を震わせてそう言うと、明彦は黙り込んでしまった。


明彦みたいなタイプが一番納得する内容だと、知っていた。


順位を付けた争いどうのこうのよりも、目に見えない心の方がよほど大切なのだ。


「嘘だろ……?」


明彦がようやく発した言葉はそれだった。


弱弱しく、情けない声色。


「本当の事だよ……ごめんね、明彦」


あたしはそう言うと、明彦から逃げるように走って学校へ向かったのだった。