「どうしてここにいるの?」


「知世がメールに返事をくれないし、電話にも出てくれないからだろ」


明彦は怒った口調でそう言った。


あたしはそんな明彦の隣をスッと通り抜けて歩き出す。


「おい、無視するなよ!」


「ちゃんと聞いてるよ? 話はなに?」


「なにって……わかるだろ!?」


明彦はそう怒鳴り、あたしの肩を強引に掴んで立ち止まらせた。


こんな痴話げんかみたいなことで無駄な時間を使うつもりはあたしにはなかった。


「明彦とは昨日別れたつもりだから、話なんてないの」


昨日の夜からとても心地いい気分だったのに、また台無しだ。


歩調は自然と早くなり、大股で地面を踏みしめる。


「別れるなんて、俺は納得してないからな」


「明彦が納得していなくても、あたしはもう明彦と一緒にいるつもりはないから」


「それなら、それを俺が納得できるように説明してくれよ!」


朝から大きな声でわめき散らす明彦にうんざりしてしまう。


明彦に納得できるような説明なんてできるわけがない。


明彦にとって勉強なんて二の次で、順位なんて全く関係ないのだからあたしの気持ちが理解できるわけがない。