昼間あれだけ果歩をいじめて発散したのに、明彦のせいでまたイラつきが募ってきそうだ。


「用事なら帰りながら聞くから、言って?」


あたしは立ち止まらずにそう言った。


明彦は呆れたような表情であたしを見る。


「あのさ、このまま喧嘩して帰るのは嫌なんだ、俺」


真剣な表情に切り替わり、明彦が言う。


「喧嘩? そんなのもう気にしてないよ」


あたしは少し笑ってそう答えた。


明彦の表情が一瞬にして明るくなる。


まるで百面相をしているようでおかしい。


「本当か? よかった。知世、昼間もずっとどこかに行ってたし、俺のせいかなって思ってたんだ」


「うん、そうだよ」


あたしは明彦を見ずにそう言った。


「へ?」


「明彦のせいでストレスがたまってたから発散しに行ってたの」


「冗談だろ?」


「本当の事だよ?」


あたしは小首をかしげてそう答える。


明彦はうろたえて視線を左右に泳がせた。