トイレから戻るとさっきは教室にいなかった花梨が駆け寄ってきた。


「知世、大丈夫?」


クラスメートからついさっきの出来事を聞いたのだろう、心配している。


「大丈夫だよ。トイレで落ち着いてきたから」


あたしはそう言い、ほほ笑んだ。


色々考えた結果、あたしの彼氏にふさわしいのは明彦ではないとわかった。


あたしにふさわしくない明彦に対してイラつく事は、時間の無駄だ。


「そっか、それならよかった」


花梨がホッとしたようにほほ笑む。


「でも、知世が怒るなんて珍しいね?」


「えへへ。ビックリさせちゃってごめんね」


あたしは自分の頭をかきながら席に座った。


普段から怒鳴り馴れていると言う事は、周囲にはバレていない様子だ。


明彦のせいで危うく学校内で本性を出すところだった。


「たまには喧嘩とかもあるよね」


花梨がそう言ったとき、クラスメートの松田果歩(マツダ カホ)が花梨の横を通り過ぎて行った。


クラスいちトロ臭くて、チビでデブな女。


その姿があたしの視界にうつることさえ、うっとおしく感じられる。


あたしは花梨へ視線を戻し、何も見なかったように会話を続けたのだった。