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明彦と大きな喧嘩をしたことは、今まで一度もなかった。


明彦は少し頼りない性格をしているけれど、それはそれであたしを穏やかな気持ちにさせてくれていた。


でも、今回は違う。


明彦のそんな性格が、あたしの気持ちを逆なでするだけだった。


テスト順位なんて興味のない明彦にあたしの気持ちなんてわからない。


勉強での競争心が乏しい明彦は、誰かに勝とうと言う気持ちもないのだ。


教室を出たあたしは女子トイレに入り、個室に鍵をかけた。


イライラする気持ちを押さえようと便器に座り、貧乏ゆすりをする。


そしてふと思い出した。


昨日帰りに偶然この美たちに会ったとき、この美は京一郎と2人で勉強しているようだった。


あたしと明彦にはそれがないのだ。


休日だと言えばただのデートで、教科書を持って集合したことなんて1度もない。


明彦を自分の勉強に付き合わせるのも悪いと感じて、一緒に勉強しようと誘ったこともなかった。


今度誘ってみようか。


あたしの努力を目の当たりにしてくれれば、1位を取らなきゃいけない気持ちがきっとわかるだろ。


そう思い、希望を感じる。


しかし、そんな希望も一瞬にして消えていってしまう。