しかし、喜んでいたお母さんはすぐに表情を曇らせた。


「知世、1位はたしかにすごい事だけど、2位でも3位でも十分にすごい事よ。だから、1位に気をとられてばかりじゃダメよ?」


その言葉に、あたしは伸ばしかけていた箸を止めた。


「どうして?」


「どうしてって、トップ10に入るだけでもすごい事じゃない。ほとんどの生徒たちがその中には入れないんだから」


お母さんは眉を下げてそう言った。


お母さんの言っていることの意味はわかる。


他の生徒たちが簡単に取れる点数じゃない事も、わかっている。


だけど、あたしにはその点数が取れて、1位も狙える場所にいるのだ。


それなのに2位でも3位でもいいなんて考え方はできなかった。


学年全員を見下ろす1位という場所に立つ事に意味があるんだ。


あたしは手早くご飯を食べて席を立った。


「知世。もう出るのか?」


「うん。早めに行って順位を確認したいから」


あたしはお父さんへそう返事をして、家を出たのだった。